治療中の方へ

1 適切な治療の継続

① 治療中の方は、まずは治療を継続しましょう。

 言うまでもありませんが、事故によって負った怪我を治すことを最優先にしてください。後にいくら高額な賠償金を得られるよりも身体が治った方がよいというのがほとんどの事故被害者の方のご希望だと思います。

 適切な治療を受けなければ、治るものも治りません。信頼できる医師のもとで治療を継続してください。

 お仕事があって、なかなか病院に行けないという方もいらっしゃるかもしれませんが、できる限り、医師の指示に従って十分な治療を受けてください。

② 適切な検査を受けましょう

 特に、明確な他覚所見のない、頚椎捻挫(むちうち)・腰椎捻挫・肩や膝の痛み等については、早期にMRI等の検査を受けてください。レントゲンは骨しか写らず、軟部組織の損傷等はMRI検査を受けなければわかりません。

 また、高次脳機能障害の場合は、早期にWMS-R(ウェクスラー記憶検査)や三宅式記銘力検査等の専門的な検査をしたほうが良いです。また、意識障害の有無とその程度について、事故直後に対応した医師の記憶が鮮明なうちに診断書をお願いした方が良いです。

  どのような検査が必要かについては、もちろん症状によって異なってきますので、まずは具体的にご相談ください。

③ 整骨院・接骨院での施術について

 整骨院や接骨院に通院すること自体は問題ありませんが、病院(整形外科など)の主治医の許可・承諾が必要です。

 病院によっては、整骨院や接骨院の併用治療を認めないところもあります。そのため、整骨院・接骨院治療を受ける場合には、必ず主治医に話を通しておくようにしてください。なお、主治医から整骨院治療の「許可書」などの書面をもらう必要まではありませんが(そもそも、そのような書面までは出してくれない病院の方が多い)、きちんと主治医に話を通しておけば、カルテには整骨院に通院している旨を記載してくれることがほとんどなので、それで大丈夫です。

 また、後々、適切な後遺障害の認定を受ける場合、整形外科等の病院への一定程度の通院が必要となります。 

 とりわけ、明確な他覚所見のない頚椎捻挫(むちうち)・腰椎捻挫・肩や膝の痛み等については、後遺障害の認定に当たり、病院(整形外科)への通院回数が重要となってきます。病院と並行して整骨院や接骨院へ通院するのは大丈夫ですが、整形外科への通院は欠かさない方がよいです。 

2 保険会社への対応

 交通事故被害に遭った場合、事故直後から加害者側の保険会社と話をすることになります。保険会社は事故対応のプロですが、被害に遭った方には、普通、交通事故についての専門的知識はありません。

 そして、必ずしも大手の保険会社だから被害者に対して適切に対応してくれるというわけではありません。あくまで「加害者の保険会社」ですから、「被害者」との間には、利害が対立する場面も少なくないのです。

 したがって、保険会社の言うとおりにした結果、後で取り返しのつかないことになってしまう可能性もないわけではありません。

 その点、治療中の段階で弁護士に依頼する場合、保険会社とのやりとりはすべて弁護士が窓口となるので、被害者の方が保険会社とやりとりすることはなくなります。保険会社と直接やり取りをしなくてもすむというだけでも精神的負担はずいぶんと軽減されることが多いように思われます。

3 休業損害について

 事故によって働けなくなっている場合、休業損害を請求することができます。

 給与所得者の場合は、勤務先に休業損害証明書を作成してもらって、それを相手保険会社に提出して請求します。一月ごとに請求してもよいですし、後でまとめて請求してもかまいません。

 自営業者の場合は、収入が減少したことを資料等で裏付けて休業損害を請求する必要がありますが、簡易に自賠責保険での基準(定額)で請求することもあります。

 主婦の方の場合、裁判実務、弁護士実務では、全女性労働者の平均賃金を主婦の年収とみなして、傷害の程度や通院頻度、事故後の経過時期などによって、計算します。主婦休業損害は多くの場合、数十万円程度の算定になりますし、場合によっては100万円を超える算定となることもあります。

 ただし、多くの保険会社は、全女性労働者の平均賃金ベースの年収算定ではなく、自賠責保険の基準(低い金額)を提示してきます(当事務所が適切な基準での補償を求めた結果、100万円以上アップしたケースがも多数あります)。

 休業損害でお困りの方も、まずはご相談ください。