事故直後の方へ

1 適切な治療・検査が最優先

① すぐに病院へ行って、症状を正確に伝えましょう

 事故でお怪我をされた場合、できるだけ早めに病院に行ってください。

 初診日が事故からあまりに日にちが空いてしまうと、事故による怪我であることの証明が難しくなってしまうことがあります。

 よくあるのが事故直後や翌日、翌々日から痛みがあったとしても、「2,3日したら治るだろう」と軽く考えてしまったり、あるいは我慢するなどしていて、例えば事故から2週間くらい後に初めて病院に行ったような場合です。このような場合、事故による痛みなのかの証明が困難になってしまいます。そのため、相手(加害者、保険会社)から「事故との因果関係が不明」と事故受傷を否定されかねません。 

 そのため、事故後に痛みや違和感などを感じたのならば、できるだけ早めに病院に行くよう気を付けなければなりません。 

 また、初診の際、実際は腰も痛かったのに首の痛みだけを告げ、腰の痛みのことをしばらく医師に告げず、2週間後に腰の痛みを告げたような場合、後に「果たして本当に腰の痛みは事故後からあったのか?」ということが問題にされかねません。 

 そのため、痛みや違和感など異常がある箇所(身体の部位)は、すべて初診時に正確に医師に伝えてください。初診時にすべての箇所を伝えるのが難しかったとしても、少なくとも2回目、3回目の診察時までには伝えるようにしてください。

 医師は、患者の説明をカルテに記録しますが、伝え忘れていた症状があれば、それはカルテに残らないので、最初からなかった扱いにされてしまう可能性があります。 

 また、痛みがある箇所についてはできるだけ早期にレントゲンやMRI等の検査を受けてください。 

② 病院選びは慎重に行いましょう

 事故直後に行く初回の病院は、あまり自由に選べないことが多いと思われます。

 事故現場の近くの病院に行くことになるでしょうし、救急車で搬送された場合はそもそも選ぶことはできないからです。

 しかし、2回目からの治療を受ける病院は慎重に選ぶ必要がありますもしも医師とあわないと感じたり、ちゃんと診てくれない、全然話を聞いてくれないなど不信感があるのであれば、すぐに病院を変えた方がよいです。後になればなるほど、変更は難しくなります。

  骨折などのはっきりした他覚所見がある怪我であればそれほど心配することはありませんが、はっきりした他覚所見のない頚椎捻挫(むちうち)・腰椎捻挫・肩や膝の痛み等については、後々の後遺障害の認定にあたって、通院回数が重要な要素となってきます。 

 しかし、医師によっては、痛みを訴えて治療に行っても、次回は痛みがあれば2週間後に来てくださいというところもあれば、痛みを訴えても相手にしてくれない医師も(残念ながら)います。また、病院によっては後遺障害診断書の内容を患者の不利になるような表現でしか記載してくれないところも(残念ながら)あります。

 そのため、医師に不安があれば、すぐに病院を変えたほうが良いです。

③ 整骨院・接骨院での施術について

 整骨院や接骨院に通院すること自体は問題ありませんが、病院(整形外科など)の主治医の許可・承諾が必要です。

 病院によっては、整骨院や接骨院の併用治療を認めないところもあります。そのため、整骨院・接骨院治療を受ける場合には、必ず主治医に話を通しておくようにしてください。なお、主治医から整骨院治療の「許可書」などの書面をもらう必要まではありませんが(そもそも、そのような書面までは出してくれない病院の方が多い)、きちんと主治医に話を通しておけば、カルテには整骨院に通院している旨を記載してくれることがほとんどなので、それで大丈夫です。

また、後々、適切な後遺障害の認定を受ける場合、整形外科等の病院への一定程度の通院が必要となります。 

とりわけ、明確な他覚所見のないむち打ち・腰椎捻挫・肩や膝の痛み等については、後遺障害の認定に当たり、病院(整形外科)への通院回数が重要となってきます。病院と並行して整骨院や接骨院へ通院するのは大丈夫ですが、整形外科への通院は欠かさない方がよいです。  

2 保険会社への対応

 交通事故被害に遭った場合、事故直後から加害者側の保険会社と話をすることになります。保険会社は事故対応のプロですが、被害に遭った方には、普通、交通事故についての専門的知識はありません。

 そして、必ずしも大手の保険会社だから被害者に対して適切に対応してくれるというわけではありません。あくまで「加害者の保険会社」ですから、「被害者」との間には、利害が対立する場面も少なくないのです。

 したがって、保険会社の言うとおりにした結果、後で取り返しのつかないことになってしまう可能性もないわけではありません。

  その点、治療中の段階で弁護士に依頼する場合、保険会社とのやりとりはすべて弁護士が窓口となるので、被害者の方が保険会社とやりとりすることはなくなります。保険会社と直接やり取りをしなくてもすむというだけでも精神的負担はずいぶんと軽減されることが多いように思われます。

3 警察への被害届と証拠資料の収集

① 警察への被害届

 事故によってお怪我をされた場合、よほどの事情がない限り、警察に被害届を出して、人身事故扱いとしましょう。

 人身事故扱いとなれば、警察では刑事事件捜査資料として、実況見分調書(現場見分調書)というかなり詳細な図面資料などを作成します。

 そのような警察作成の資料は、後に民事事件(交通事故損害賠償)の関係でも入手できるので(すべての資料ではありませんが)、もしも事故態様や過失割合に争いがあったり、怪我の状態(損傷の程度)を証明しなければならなかったりする場合、有用な資料となります。

 ところが、(人身事故ではなく)物損事故で処理をした場合、刑事事件捜査ではないので、実況見分調書は作成されず、簡易な資料(物件事故報告書)しか作成されません。物損事故報告書もないよりはマシですが、実況見分調書に比べれば、その有用性は劣ります。

 そのため、事故でお怪我をしたならば、その事実どおりに人身事故扱いとすべきなのです。

 なお、当初物損事故として届けていた場合、後の人身事故への切り替えは、事故からある程度時間が経過した後であっても可能です。

② 証拠資料の収集

 最近は、自動車にドライブレコーダーがついている場合が多くなりました。ドライブレコーダーの映像は事故態様を証明するのにもっともよい資料ですから、もし、ご自身の車にドライブレコーダーがついていたならば、間違っても映像を消去してしまわないようくれぐれも気を付けてください。自動的に過去の映像から消去されていくパターンのドライブレコーダーも多いため、事故後、適切な時期に事故時映像を保存しておかなければなりません。

 また、ご自身の車にはドライブレコーダーがなくても、相手車にはあった場合には、通常は相手保険会社から映像を入手できます。お互いのドライブレコーダー映像は隠すべきものではなく、事故態様を証明するものとして、相手とも共有すべきものだからです(ただし、中には映像提供を拒む当事者もいて困りものです)。

 以上、事故直後の方に気を付けていただきたい点を記載しましたが、具体的な対応方法については、具体的なお怪我の状態や事故状況によりますので、まずはご相談することをお勧めします。