勤務先(介護施設)からの通勤送迎バスに乗車中、バス運転手が赤信号無視で他車と衝突する交通事故を起こし、非骨傷性頚髄損傷等の負傷、裁判所による12級認定、約1000万円の賠償金を得た例
事故とケガの内容
依頼者(50代女性)は、高齢者介護施設で介護職として勤務していました。勤務先では、市中心部から施設まで職員の送迎バスを運行しており、依頼者は勤務終了後にいつものように送迎バスに乗車していたのですが、バス運転手が赤信号を無視で他車と衝突する交通事故を起こしてしまいました。
この事故により依頼者は全身を打撲し、全身(首、肩、背中、腰、両腕・手、両脚の痛み)の痛みの症状が出て、非骨傷性頚髄損傷の診断も受けました。
依頼の経緯
怪我の程度がかなり重かったこと、依頼者には自動車保険の弁護士特約があり、自己負担なく弁護士を依頼できたことから、依頼者は事故約3か月後の段階で当事務所にご相談にいらっしゃいました。
弁護活動
聞くと、勤務先の送迎バス乗車中ですから、業務中の交通事故として、労災保険の適用があると思われたこと、また治療が長引きそうだと思われたことから、当事務所では労災保険での治療とするよう助言し、依頼者も勤務先に申告する等して労災保険治療を受けられることとなりました。
労災保険を利用して、約1年間の治療を受けた後、残った後遺症状について、労基署で障害等級認定調査を行った結果、上肢症状(痛み、しびれ)も下肢症状(痛み、しびれ)も非骨傷性頚髄損傷によるものとして、併合11級(上肢も下肢も共に等級12級認定で併合して11級となる)の認定をしてくれました。
もっとも、自賠責保険(交通事故の後遺障害等級認定機関)では、上肢症状も下肢症状も等級非該当という認定でした。
請求、訴訟
事故責任がある勤務先会社に請求をしましたが、このように自賠責保険では後遺障害等級非該当とされたため、勤務先は後遺障害等級前提の請求には応じませんでした。
そのため、訴訟提起の上で、裁判所に後遺障害を認めてもらう方針としました。
訴訟では、依頼者の後遺障害該当性が激しく争われました。非骨傷性頚髄損傷とは「頚椎の骨折や脱臼を伴わないものの、外力を受けて頚髄が損傷する疾患」をいうのですが、その中でも頚髄のMRI画像に異常(輝度変化)があるものと、異常もみられないものがあります。依頼者の場合、MRI画像上も異常はなく、事故後の臨床症状から主治医が非骨傷性頚髄損傷と診断していたのです。画像上の異常がない場合には、自賠責保険は後遺障害と認めることはほぼなく、そのため、これを認めてもらって賠償を実現するためには訴訟で裁判官に認めてもらうしかないのです。
カルテ等医療記録の徹底した分析、各種医療文献や専門医の意見書の提出等の徹底した離床の甲斐があって、裁判所は依頼者の非骨傷性頚髄損傷による後遺障害等級(上肢症状14級、下肢症状12級)を認めて、約1000万円の和解案を提示しました。
当方にとって、大変望ましい和解案であり、勤務先会社も受け入れましたので、裁判上の和解が成立しました。
結果
依頼者は、それまでの労災保険給付(約150万円)、自動車保険からの受領済保険金(約300万円)の他に、勤務先から約1000万円の賠償金を得ました。
事の性質上、訴訟を経ざるを得ず、時間はかかりましたが、依頼者にとって満足のいく大変良い結果とすることができました。